拍手(十一月十九日〜十二月二十三日)


ー生贄ー(月城)




薄暗い森の中。
どこを向いても同じ様な景色に、方向感覚さえ失いそうになる。
まるで生きてここから出られないのではないかと思えるくらいの不気味さを醸し出すその中を、丸井は一人彷徨っていた。

「っきしょー。歩いても歩いても森の外に出れやしねぇ。」

まわりを見ても木、木、木。
これだけたくさんの木があればたとえ遠距離から攻撃されても、それらが障害物となってくれるだろう。
だが逆に、木が多ければ多いほど身を潜めながら近寄ることだってできる。
丸井はもうだいぶ前から、常にどこからか誰かに見られているような気がしてならなかった。

ガサッ

「うわっ!?」

突然の物音に思わず後退る。
が、すぐにその動きは中断されることとなる。

「ジャッカル!!」

そう、音の原因はジャッカルが木の陰から出てきた為だった。
丸井は急いで駆け寄る。

「ジャッカル!お前無事だったんだな!」
「ああ。」

ほっと息をつく丸井。
ゲームが開始されてから初めて人に、それも同じ学校の信頼できるパートナーに出会えて、安堵のあまりその場にしゃがみ込む。
思った以上に緊張していたらしい。

「大丈夫か?」
「ん?ああ、なんともねーって!ちょっと安心しただけでぃ!」

よっと勢いをつけて立ち上がる。

「それより良かったぜ、お前に会えて。もうずーっとここから出られなくてよー。あ、もしかしてお前も?」
「ああ。」
「んじゃ!とっととここから出ようぜ!」

丸井はジャッカルに背を向けて歩き出す。
さっきまでとは打って変わって明るくなったその表情に、ジャッカルは小さく笑った。
そしてずっと木の陰に隠していた左腕をゆっくりと掲げた。

「いやー、でももう安心だな!お前と一緒な…がっ!!」

丸井が後ろにいるジャッカルを振り返った瞬間、あたりに血が飛び散った。
首元には斧。
それが、振り下ろしたのとは逆に、今度はゆっくりと引き抜かれる。
かなりの力で斬りつけたのだろう。
血がかなりの勢いで吹き出し、丸井はその場にどさっと倒れた。

「…すまんのぅ。」

大きめの斧を手にし、ゆっくりと丸井に近づく『ジャッカル』がそう呟いた。
そして、もう動けなくなった丸井の側まで来ると、先程狙ったところと同じ場所―――頸動脈あたり―――に斧を勢いよく振り下ろした。

ザシュッ

「向こうでジャッカルと会えるとええな。」

斧に付いた血をうっとりと眺めた後、かつての仲間だったものに仁王は綺麗に微笑んだ。












死にたくない

死にたくない

まだ俺は生きていたい

まだやりたいことがいっぱいあるんじゃ

「血を…。」

なんで俺らがこんなことせなあかんのじゃ

なんで俺が死ななければならん?

「もっと血を…。」

『仁王!無事だったか!』
『それより良かったぜ、お前に会えて。』

ジャッカルも、丸井も、俺が殺した

でも――



「まだ、足りないんじゃ。」



踵を返し、仁王はゆっくりとその場を去って行った。


END


この後、彼は主人公たちに遭遇します。