「はぁ!?」
季節は夏まっただ中。
別にエイプリルフールでもないし、校則で「1日1回嘘をつきましょう!」なんていう決まりもない。(そりゃそうだ)
にも関わらず私の目の前にいるこの2人は、誰が聞いても嘘だと思える発言をさらりと言いやがった。
少なくとも、今までこいつらと関わってきた人が聞いたら絶対「何があった!?」と問い詰めるだろう。
「・・・もう1回言ってもらえる?」
今絶対聞こえるはずのない言葉が聞こえた気がするんだけど。
何?とうとう私の耳おかしくなっちゃったわけ?
「え、だからねー。」
「俺達、付き合うことになったんだ。」
ああ、聞き間違いじゃなかったのか。
よし、私の耳は正常だ。良かった良かった・・・・・
「じゃないわよ!!」
思わず机を両手でバンッと叩いてイスから立ち上がる。
「何!?あんたらいったいどうしたのよ!?何があったの!?詳しく説明しなさい!」
普段あれだけバカップルぶりを発揮しているくせに、お互いぜーんぜん相手の事意識してない超鈍感なあんたらが!
中学の頃から、いくら私達がくっつけよう、せめて自覚だけはさせようと頑張ってもすべてムダに終わったってのに、
何があればそんな簡単に恋人同士になれんのよ!
今までの私達の苦労はなんだったわけ!?
あー、目の前でちょっと照れたような笑顔で寄り添ってる2人がものすごくムカツクのは気のせいかしら?
今にも首を締めてやりたいとばかりに伸びそうになる腕を必死におさえる。
「何があったって言われても・・・ね?五月。」
「ねー?乾ー。」
少し困ったような、それでいて照れた様子の乾。
ニッコリ笑って相づちをうつ五月。
それから仲良く顔を見合わせてまた微笑みあう。
・・・何?私の存在無視?良い度胸ねー2人共v
呪いかけてもいいってことかしら?
こほん、まあそれは置いといて。
乾、さりげなく今五月のこと名前で呼ばなかった?あんた今まで「上城」って呼んでたよね?
私がそう聞くとやっと2人はこっちを向いた。
「ああ、これからは名前で呼ぶことにしたんだ。」
「コイビトになったからー。」
つまり、恋人にふさわしく名前で呼び合おうと。
何か急に「恋人」っていう言葉を意識してない?2人共。
それに、五月は未だに乾の事名字で呼んでるし。
「いいんだよ。五月は。」
「えへへー。」
殺 し て も い い で す か ?
「ま、待て待て月城!早まるな!」
即座に懐から呪符を取り出そうとする私を見て、乾が慌てて止める。
ええい!止めるな!一回殺してやらなきゃ気がすまねぇ!
―――数分後・・・
「で?何がどうしてそーなったわけ?」
妙に涼しい顔をした冬夜が足もとで正座をしている2人に聞く。
一方は派手にボロボロにされてて、もう一方はまったくの無傷で隣を心配そうに見ている。
「いや、だから、緑さんが・・・。」
ボロボロにされた方――――もちろん乾だが――――がぽつりぽつりと話し出す。
話を聞いてみると、どうやら乾は昨日学校帰りに五月の家に寄ってったらしい。
そして五月の部屋でくつろいでいたところを、たまたま家にいた緑さんが乱入してきてそのまま3人で優雅なティータイムに突入してしまった、と。
「って待て。なんでいきなりティータイムに突入すんのよ。」
しかも優雅って・・・。自分で言うか?普通。
「いや、だから緑さんがいきなり・・・。」
で、ゆっくりお茶を飲みながら話していたら、急に緑さんが
「そう言えば、五月って乾君の事好きなのよね?」
と問うてきたそうだ。
「?うん。好きだよー。」
「乾君も五月の事好きよね?」
「好きか嫌いかって言われたら、間違いなく好きを選びますけど、それがいったい・・・?」
「あら!と言うことは2人は恋人同士ってことじゃないの!」
「「え?」」
「だって、2人ともお互いの事好きなんでしょ?だったら2人は恋人ってことよ!いや〜ん!どうしましょ!今日はお祝いしなくちゃ!」
1人はしゃぐ緑さん。その様子にちょっとついて行けないながらも、乾は勇気を出して声をかける。
「あ、あの、緑さん・・・?」
「なぁに?乾君v」
五月を抱きしめながら乾に向かってウインク1つ。よほど嬉しいらしい。何度も五月の頬にキスしてる。
「えっと、本当に・・・そーゆー事なんですか?」
混乱しているのかうまく言葉に出来ない。でも、緑さんにはそれでじゅうぶん伝わったらしい。
「ええ!好きあってたらそれは恋人ってことよ!」
気のせいか、言葉の後ろにハートがいっぱい散らばっている気がする・・・。
「おめでとう!五月、乾君!2人は今日から恋人同士よ♪」
「・・・というわけなんだ。」
「・・・・・・・。」
「・・・月城?」
「・・・な、」
「な?」
「なんっじゃそりゃ―――!!」
がっしゃーん!
思わずちゃぶ台返しのように自分の机を吹っ飛ばす。
教科書やら筆記用具やらが派手に散らばるけど、んなもん知ったこっちゃない。
辛うじて難を逃れたイスにドカッと座り込む。
「はぁ・・・。」
「冬夜ー?大丈夫ー?」
「大丈夫じゃないわよ・・・。」
ため息も吐きたくなるって。
何よ、今までの私達の頑張りは無駄だったってことじゃないのよ。
緑さんのたった一言でこうもあっさり決まっちゃうなんて・・・。
今まで相手の事を妹のように、兄のように思ってた2人にしたら考えられない進歩ね。
天然バカでほんと良かったわ。ええ、本当に。
「冬夜ー?もしかして怒ってるー?」
1人で悶々と考え込んでた私を見て、どうやら五月は私が怒ってるんじゃないかと勘違いしたようだ。恐る恐る聞いてくる。
「別に怒ってなんかいないわよ。それより、早くこの事を他の奴らにも伝えてきたほうがいいんじゃない?」
絶対みんな驚くから。
「ん。じゃあみんなにも伝えてくる!行こ?乾。」
嬉しそうな顔で手をつないで教室を出て行く。
「っとに、バカップルが。」
2人の後ろ姿を眺めて、ボソッと呟く。
左に曲がって行ったところからして、次は手塚と不二に伝えるみたいだ。
「でもまあとにかく・・・」
うざいくらいのラブラブバカップルが、ほんとに恋人同士になった。
たぶん明日からは今まで以上にうざくなるんだろうけど、とりあえず、今だけは彼らを祝福してやろう。
やっと思いが通じ合った超鈍感で手がかかる親友達を。
「おめでと。五月、乾。」
あとがき
一応設定としては高校1年生の時ってことにしてます。
だからまだ手塚もいなくなってません。
クラス分けは
1組→菊丸
2組→月城、上城、乾
5組→手塚、不二
8組→大石
9組→河村