「…二人だけかいな?」
「うん」
が私の後ろから流暢に答える。
その間にも仁王がじりじりと歩み寄ってくる。
…こいつは 乗ってる。
嫌な予感は、あまり外したことはない。
今、その第六感が危険信号を出している。
こいつは ヤバイと。
「そうかい…」
そう言ってニヤリと笑った。
来る、と思う前に体が反応していた。
仁王が右手を振る前にを庇い、軌道から体ごと逸らす。
「チッ、外したか。」
仁王の右手には血のついた斧が握られていた。
「…いい武器じゃない。」
あいにく体力的に限界が近い。
できれば、少しでも時間を稼ぎたい。
そう思い、話を切りだした。
「ああ。大きいのが難点じゃが、殺傷力はなかなかのもんじゃよ。」
ニヤリと笑って斧を持ちかえる。
そして刃の部分に手をあて、付着していた血を拭うように優しく触る。
「丸井を殺ったんもコイツじゃい。ジャッカルに変装しただけで簡単に騙されよった。可哀相な奴やな…。」
そこで一呼吸をおいて、軽く溜め息をつく。
「…まだ、足りんのや。俺が勝つためには、生きるためには、もっと血が必要なんや。」
斧を下ろし、持ちかえる。
そして顔を上げる。
その顔には笑顔が張り付いていた。
「だから…お前さんがたもここで
死んでもらう!」
標的は…
「…え?」
――― 。
間に合わない。
そう思ったときには右手が構えていた。
ドォン
乾いた音が鳴り響く。
「な……んじゃ…と…?」
仁王がその場に倒れこむ。
が慌ててこっちに向かってくる。
「…?」
ガチャッ
急に右手の力が抜ける。
地面にぶつかって無機質な音が鳴る。
「…ハハ…ハハハ…」
とうとう
私も戻れなくなった…。
そう…よ、ね…。
を守ると決めた時点で…もうすでに決めてたんじゃない。
…ただ、私の覚悟が
――― 足りなかっただけ。
とりあえず、両手を無理やり動かして、顔をパンッと叩く。
さ、目を覚ましなさい。まだやらなきゃいけないことはあるんだから、と。
に目をやり、心配させないように立ち上がる。
そして、倒れた仁王のすぐそばにあった鞄をあさる。
「。ダメだよ、人の鞄あさったら。」
「いいの。もう死んだ人間には意味がないんだから。私達が生き抜く為にも、必要なの。」
…どうせやるんなら、とことんやってやる。
「仁王、死んじゃったの?」
倒れている仁王を見つめながらがつぶやく。
「もうすぐ死ぬでしょ。生きてたとしても、動く事は出来ない。」
我ながら、この冷静さには感服する。
には少々きついかもしれないけれど、これが私の武器といっても過言ではない。
鞄から取った食料を詰め、を促す。
「行くよ。銃声を聞きつけて、敵が来るかもしれない。」
は静かに頷く。
息のない屍を残して、二人は林の中に消えた。