血の匂いが微かに香る。
二人の少女が林の中を駆けている。
その手には銃。
制服は血で染まり、切り傷や火傷らしき痕も見うけられる。
息は切れ、それでも何かから逃げるように走る。
不意に背の高い方が声を上げる。

「伏せて!」

急に頭を押さえつけられ、危うく地面と衝突しそうになりながら、小さな女の子が頭を伏せる。

「…?」
「ここにいて。…倉庫よ。」

二人の目の前には錆び付いた倉庫があった。
女の子がそのまま伏せているのを確認し、、と呼ばれた彼女は銃を構え中に入る。

キィ という錆び付いた独特の音をさせながらドアが開く。

「………大丈夫…みたいね。」

念のために銃を構えつつ中を見回す。
どうやら、人がいる気配はない。

、入って」
「ん。」

待たせていた女の子を呼び寄せる。
自身はすぐそばにあった少し埃ぽい革張りの椅子に腰掛ける。

「…、ちょっと休みな。さっきから走りっぱなしだったから。見張っておくから。」

、と呼ばれた小さな女の子は頬を膨らませ、抗議する。

だってずっと休んでないよ。も少しは休みなよー。」

緊迫感のない台詞とは裏腹にその目は怒っている。

「私はあんたと違って体力あんの。ほら、さっさと寝なさい。」

体力のことを言われると何も言い返すことは出来ない。
実際に自分でも体力のあるほうだとは思っていないらしい。
少し間があって

「…おやすみ」

と渋々横になった。



5分としないうちにの方から寝息が聞こえる。
そうだろう。ここ2日位、ほとんど休みなしで動いている。
体力に自信のある自分ですら辛いのに、まして体力のない彼女が辛くないわけがない。

「はぁ…」

溜め息をひとつついて顔を上げる。

…なんでこんな事になったんだろう。
仲間だった、友人だった彼らと、殺し合いなどしなくちゃいけないのだろう。



当初の予定では、立海、氷帝、青学の3校合同合宿のはずだった。
しかし、バスの中からほとんど記憶はなく、目を覚ますとすでにこの島にいた。

通常はクラス単位でやるんだがね、あんたらは危険だからまとめて殺そうって政府から通知があってね。

最初は全く信じられなかった。
あれだけ生徒のことを考えてる先生はいないと思っていたのに。
にこやかに言い放った竜崎先生。

『頑張って殺し合いするんだよ。』



今思い出してもぞっとするような笑顔。
少し気分が悪くなり、深呼吸をする。
まだは眠っているようだ。


とりあえず、まずはを守らなきゃ。
そして、乾に届ける。

最初に彼女―に出会ってから決めいていたこと。
それはの恋人である乾の所へ届ける事。
幸いまだ放送で名前は呼ばれていない。
乾だってを探している事だろう。
それまでは自分が親友の彼女を守り抜く。
そう決めたのだ。

でも、もうこのゲームに参加しているやつがいる。
私は……参加したくない。でも…


「ん…」

その一言で急に現実世界に引き戻される。
どうやら寝言らしい。
そして、自分の右手を見て、苦笑いをした。
しっかりと銃を握っている。



最初にあんたを見つけられて良かった。
じゃなきゃ、一番に殺されてたでしょうね。
きっと今だって何が起こってるかわかってないんだろうけど。

布団代わりの布をかけなおす。
そして頬にかかっている髪を退けてやる。


…もし、がこのゲームを理解したら……。
は参加するんだろうか…。



「…い……ぬい…」

寝言でも呼んでる。
微笑みながら、耳元でささやく。

「…大丈夫。ちゃんと私が届けてあげるから…」